飛べない黒猫
穢れた血
4月に入って、庭の桜の木も満開に咲きほこっていた。

和野が不在になって、4ヶ月。
洋子や蓮のおかげで、真央は不自由無く過ごす事が出来ている。



「お花見?」


また、徹夜だったのだろう…蓮は眩しそうに赤く充血した目をしばたいて真央に話しかけた。

真央は桜のスケッチを蓮に見せる。


庭には2本の桜の木がある。

この洋館を買い取った時には、もう既にそこにあったから樹齢は不明だが、幹の太さからみても、かなり長い年月を過ごしているのがうかがえる。


春になると毎年白い花を咲かせ、花びらが散った後は実を付けた。
そう、さくらんぼの実。


特に肥料や、鳥対策はしていなかったが、結構な量の実をつけた。

2回に分けて収穫するが、大きめのザルたっぷり取れる。

毎年、青田がハシゴをかけて摘み取っていたが、今年は蓮がその役目を引き受ける事になりそうだった。




「おぉ、やるねぇ…
真央の絵は、本当に細かいね。
構図はすごく大胆なのに。
そのギャップが、いい味だすよな、ピカソもビックリだ。」


嬉しそうに真央は笑う。


「こないだ出したコンクールのも、この桜がモデルだったんだね。」


大きくうなずき、スケッチブックの前のページを探す。
数枚めくったところで手を止めて、指差し、蓮の顔を見た。


「あぁ、そうだね、コレだね。」


真央は照れて笑い、またスケッチを始める。



ジーンズのショートパンツに紺と水色のボーダー柄のパーカー。

赤いスカートをはいてから、洋子は事あるごとに洋服を購入して真央に与えた。
真央も最初は困惑していたものの、最近では嬉しそうにしている。

クロオのように真っ黒一色の真央だったが、やっと世間一般的な女子のように、オシャレを楽しんでいるようだった。
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