飛べない黒猫
パソコンの検索ページに真央の名前を入れて検索する。
書き込み掲示板の画面が映し出され、真央に対する書き込みが溢れるように湧き出てきた。


美術界のアイドルだ、神だ
聖少女

ねじ曲がった欲望にさらされた真央は、勝手な理想像に奉りたてられる。

病んでる
痛い子
天才と狂気

悪意に満ちた嫉妬のはけ口として書き立てられる。



いい加減にしろ!

反吐が出そうだ…



蓮は画面を閉じる。

椅子の背もたれに身体を押しつけ、深い溜息をついた。


入賞時の取材と写真撮影は受けたが、それ以外は全て断っている。
取材の後、あっと言う間に真央の写真が世間に流れ、神秘的な才能ある美少女として一人歩きしてしまったのだ。

真央を守るため家族は口を閉ざし、コンクールの関係先にもノーコメントを徹底してもらった。

まだ未成年だという事も幸いして、正式に掲載した写真以外、マスコミに流れる事も無かった。



この迷惑な浮かれ立ったマスコミの嵐が過ぎたら、じっくりと地に足をつけて外の世界を知っていけばいい。
それまでの間は、毒された社会から真央を守っていこう。

これが俺達家族が出した結論だった。



デスクトップにメール受信の通知がでる。
真央からのメールだった。




件名 びっくりした!
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マオ・クロの尾ビレの色が変わった。
冬毛が抜けて、夏毛に生え替わったみたい…

ステンドグラスの花火は順調です。

前回作った桜よりも、気持ちが入ります。

小さい頃に見た花火を思い出して、心の中で膨らませて作ってます。


追伸 花火を思い出すと、かき氷も食べたくなります。イチゴミルクが好きです。
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