Rose of blood *short story*
案内された部屋のソファーに座り待っていると、先ほどの男性がお茶を持って部屋に入ってきた。



『どうぞお気遣いなく』

『そういうわけには参りません。お客様ですから』



優しい話し方をする人だなと思った。


男性は俺の目の前のソファーに腰掛けた。



『先ほどは取り乱してしまい申し訳ありませんでした』

『いえ、無理もありません』



今日奥さんの方は不在なんだろうか…。



『家内は瑠花が行方不明になってからどんどん精神的に病んでしまいまして…今はほとんどベッドに寝たきりなんです』

『そう…でしたか』



俺の表情から思っていることを読み取ったのか、なれた感じで話をしてくれる。


恐らくいろんな人に同じような説明を何度となくしているんだろう。



『瑠花の事で誰かが訪ねて来て下さったのは半年ぶりです。あっ申し遅れましたが私は父親の俊一(トシカズ)と申します』

『ご丁寧にありがとうございます。私はシエル・エメラルディアと申します。この度は突然お邪魔してしまい申し訳ありません』






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