Rose of blood *short story*
部屋にどことなく重たい空気が流れる。


事前に何を話そうか考えてはきたが、こちらの世界ではどれも現実味のない話の為、結局内容をまとめられないまま来てしまった。



『失礼ですが、瑠花とはどの様な関係でいらっしゃったんでしょうか?』

『正直何からお話をすればいいのかも分からないまま、こちらに来てしまいました……私は…瑠花の婚約者です』



お父上のお茶を飲んでいる手が止まり、理解できないというような顔をしてこちらを見る。



『な…にを…おっしゃっているのか……』

『そうおっしゃられるのも無理はありません。ですが…先日子供も生まれ、後数ヶ月後には式も控えております』

『何をッッ!!ッッあの子は…あの子はッッあなたと一緒になるために姿を消したと言うんですかッッ!?』

『…お父上もよくご存じかとは思いますが、瑠花はそんな身勝手な女性ではありませんよ』



怒りに満ちた顔は段々と崩れ、今にも消えてしまいそうな程弱々しい顔になる。


瑠花を失って、愛する妻を支え自分の身も心も壊れてしまいそうなのに、こんな話は聞きたくないだろう。







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