望月の夜に
16歳の誕生日
「ねぇ、ちょっといいかな?」
放課後。
帰ろうとしたときに門のところでひき止められた。
私に話しかけてきたのは、銀髪で金の瞳をした少年。
多分、私よりもいくつか年下だろう。
「ちょっと、話したいことあるんだけど……。今から大丈夫?」
「はぁ…………」
私の顔を除き込む少年。
……女の私よりも、ずっと可愛いのはどうしてだろうか。
そんなことを考えながら、『じゃあ、行こう』と言って私の手を引く少年について行く。
着いた先は公園で、ちょうど日陰になっているベンチに座るように促された。
そのまま立っているわけにもいかないので、私はベンチに座る。
「さて。初めまして、僕は狼宮 冬哉(ロミヤ トウヤ)」
「冬哉、くん……?」
「うん。君は、柴笠 茜さんだよね?」
「そう、だけど……」
調べてきた、ということでいいのだろうか。
私は彼に名前を言ってないし、彼と知り合いではない。
「で、突然なんだけど……16歳の誕生日、おめでとう」
「え……?」
ポン、という音と同時に冬哉くんはどこからか花束を出す。
そしてそれを私に差し出した。
バラとかすみ草の花束はとても可愛らしくて、まさしく女の子に贈るようなものだ。
確かに、今日は私の誕生日。
年も合ってて、16歳の。
「どうして、知ってるの?」
「今日、君を迎えに行くのは君が産まれたその瞬間から決まってたから」
妖艶に笑う、冬哉くん。
決まってた、とはどういうことだろうか。
どこか冷静な頭で考える。
「君には今から、この地を離れてもらうよ」
「どういう、こと?」
「君の胸元に、月の形をした痣があるよね?」
冬哉くんは、私の胸元を指差す。
ぞくり、と嫌な予感がした。
「それはね、僕らの一族の所有印なんだ」
「所有印……?」
どう考えても怪しい彼に、私は身構える。
けれど、彼はそれを見透かしたように笑みを浮かべた。