望月の夜に
白い少年
「君、可愛いね。どこのクラス?」
「クラスと名前、教えてもらっていい?」
「なんか、可愛くなったな」
昨日の突然の訪問から一夜明けて。
私の生活は一変した。
彼、冬哉くんが言ったのは、こういうことだったのだろうか。
朝から通学路や廊下を歩いていると、見る人見る人が私を見てくる。
そして、クラスと名前を訊いてくる人までいた。
朝、鏡を見たけれど別に変わったことはなかった。
言うなら、今まで本当に痣のように青紫だった痣……。
否、“刻印”の色が変わってしまったぐらいだ。
闇夜に浮かぶ月のように、淡いクリーム色のような色になってしまったことぐらい。
「朝からお疲れ、茜」
「なっちゃん……。ありがとう」
机に突っ伏していた私に話しかけてきたのは、なっちゃん。
中学生のときに仲良くなって、今に至る。
通学のときこそ見てないけれど、私が学校に着てからの様子はずっと見ている。
なっちゃんも、急な変化に首を傾げていた。
「ついに茜にモテ期かねぇ……。急に男子に話しかけられるようになって」
「そんなのいらないもん……」
話しかけてこなくても、視線が痛い。
チラチラと私のほうを見てくる視線。
それは、なっちゃんも同じようで。
「それにしても……そこ!さっきからチラチラ茜のこと見るんなら堂々話しかけなさいよ!それでも男か!」
なっちゃんは、クラスの男の子を蹴散らす。
うん、きっと誰よりもなっちゃんが男前だよ。
「疲れてるねぇ……。一時間目、保健室で休んだら?」
「……そうする」
「あ、保健室まで一緒行こうか?」
「大丈夫だよ。先生に言ってて」
「ん、わかった」
なっちゃんの返事を聞いて、私は教室を出た。
私は突き刺さるような視線を感じながら、早足で保健室を目指した。