欲望チェリ-止まらない心
萌菜ちゃん達が去ってもなお、呆然と座ったままのあたし。
矢嶌紅は携帯をしまうとあたしに歩み寄る。
「立てるか?」
矢嶌紅はあたしの腕を掴み、立ち上がらせた。
制服のスカートは埃で白くなり掴まれた髪はボサボサだ。
叩かれた頬は赤い。
だけど――…
痛みよりも今起こった事の衝撃の方が大きくて
あたしは体がうまく動かなかった。
ただただ小さい震えが止まらない。
そんなあたしの頭に矢嶌紅が手を伸ばした。
「…!?」
思わずビクッとなるあたしに、一瞬躊躇したその手は
そのままあたしの頭に触れるとボサボサの髪を優しく整えてくれた。
「……………」
少し顔を上げると、矢嶌紅と目が合った。
その瞳が、あたしの心をゆっくり解放していく。
「っ…」
あたしの目からじわりと涙が溢れだした。
「っく…ひっ…うぅ~~…」
怖かった。
どうして…?
なんでこんな目に合わなきゃいけないの…?
矢嶌紅はそのまま、あたしの手を引くと生徒会室に向かった。