欲望チェリ-止まらない心
俺は適当に仕事をするふりをしながら、そんな事を考えていた。



だから橘の言葉にも反応が遅れてしまった。










「紅っ…聞いてますか?」


「――え?」


俺が顔を上げると、橘が俺を見ていた。


「あ、あぁ…なに」


「大丈夫ですか?なんかボーっとしてますよ」


橘は俺をじっと見ている。


「…別に」


そう言いながら俺は視線を反らして眉間を軽く揉んだ。


なんか俺…

疲れてんのかな。









「あ、そう言えばあたし昨日ダウ二ー買ったんですよ」


「え?」


「紅の匂いが忘れられなくて」


そう言うと橘は自分の制服の肩をクンクンした。



「う~ん、やっぱ良い香り……」


「お前…どんだけ好きなんだよ」


「だって、本当にあのあとも紅の匂いがずっと鼻に残ってて…あたし、匂いフェチだったんですね」


< 197 / 488 >

この作品をシェア

pagetop