欲望チェリ-止まらない心
俺たちはベンチから立ち上がると、歩き始める。


「そういやお前、コーラ飲んでねーじゃん」


「あ…」


橘のコーラは未だに空けられてもいない。


橘はごまかすように、てへへと笑った。


「実は、あたしも炭酸苦手で」


「は…?」


「紅は絶対にコーラだと思ったんで…!」


「………」


どんだけの思い込みだよ。


「そういうことはもっと早くに言えよ」


俺は呆れた声を出す。


「いいんです。別に喉は渇いてないですから」



「………」


だけど今日は外の気温も30℃以上あるし。


ショッピングモールの中も、室内とはいえ節電のためか温度は高めだ。


歩きだした俺たちは、少し汗をかいていた。


「新しいの買ってくる」


かばんから財布を出そうとする俺を橘が止める。


「ほ、ほんとにいいです!申し訳ないです」


「でも」


「あ!じゃあそのなっちゃん、ちょっと欲しいです」


「は?これ?」


なっちゃんの中にはまだ半分ほど中身が残っている。


俺が缶を見せると、橘はうんうん頷いた。


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