欲望チェリ-止まらない心
「三咲はさ…」
ふいに聖が、言う。
「ん?」
「俺の為に、いつも一生懸命なんだよ」
「あぁ…」
「俺にはその頑張ってる姿が、可愛くてたまらないんだ」
聖は机に肘をついて、遠くを見るように微笑んだ。
「紅にとっては三咲は苛々するタイプだと思うけど」
「…………」
「三咲のことわかってやってね?」
「…………」
なんだろう。
蝉の声がやけに頭に響く。
背中にツ―…と汗が流れた。
聖はまたフッと笑う。
「そういや紅、最近俺に何かいいかけてたよね?」
「…あ、あぁ」
「なに?」
「…………」
真っ直ぐ俺を見る聖から視線を反らした。
心を………読まれそうで――…
「いや、なんにもない」
その時、休み時間を終えるチャイムが鳴った。
「あ、じゃあまたね」
聖は爽やかな笑顔で教室を出ていく。
その背中を目で追いながら、
俺は…なんで言わなかったんだろう。
言わなかった傍から、小さな後ろめたさと後悔が押し寄せてきた。