欲望チェリ-止まらない心
―――放課後








いつものように俺が生徒会室に行くと、先に来ていた橘が寝ていた。


明日からはテスト3日前になり部活や生徒会の仕事も禁止になる。


その後は夏休みに入るから…


放課後のこの時間とも、今日でしばらくお別れだ。


俺に気付かずぐっすり寝たままの橘。


テスト前で橘も寝不足なんだろう…


俺は橘を起こさずに、一人で仕事に取り掛かった。







そんな時、


「…う…ぅ…」


橘が小さくうなり声を出した。


…悪夢でも見ているのか?


机に体を伏せた橘の横顔は眉間にシワが入り小さく汗ばんでいる。


さらに


「ごめ…なさ…」


夢の中でまで謝る橘。


「ごめ……」


普段からどんだけ気を張りつめて生きてんだよ。


俺は橘の頭にそっと手を伸ばすと、軽くなでてやった。


人間は頭をなでられるとリラックスするらしい。










「こ…う…」






――は?



名前を呼ばれてドキッとした。


「…起きてるのか?」






すぅ―すぅ―…


しかし寝息が聞こえてくるだけで反応はない。


俺は席を立ち、橘の顔を軽く覗き込んだ。





橘は、まだ寝ていた。


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