欲望チェリ-止まらない心
初めて歩くホテル街。


こんなに近くでラブホテルを見るのは初めてだ。


入り口には見るからに下品な装飾や写真が立ち並ぶ。


まだ4時過ぎだというのに天気が悪いせいで辺りは暗くなり


どのホテルにも煌々(こうこう)とネオンが灯っていた。


たまにカップルがそこに出入りするくらいで人通りはあまりない。


あたしはどこを見て良いかも分からず、地面に視線を落として歩いた。


気まずい。

こんな場所…

早く通り抜けたいよ~!



「三咲ちゃん」


ふいに名前を呼ばれて、店長さんの足が止まった。


……ん?


そして、あたしが顔をあげようとした時だった。








「……あれ?おじさん?」


私たちの背後から、突然そんな声がした。



―――え?


その少し低い声に振り向くと、そこには自転車にまたがった男子がいた。


薄暗闇の中でもわかる赤い髪にキレイに整った顔立ち。


そして、あたしと同じ制服―…




「あ、あ…れ?こ…こう君?」


店長さんはなぜか上ずった声を出した。


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