欲望チェリ-止まらない心
――その時









ガタッ…





当然したその音に、あたしとひー君が音の方を見ると


紅が静かにイスから立ち上がっていた。


「…終わったから、戻るわ」


紅は低い声でそれだけ言うと


こちらをちらりとも見ずに仕事の資料をトントンとまとめた。


「あぁ、ご苦労様」


ひー君はあたしの頬から手を離すと、爽やかに紅に微笑む。






「あ、そういや三咲、放課後はあいてる?」



「え…?あ、うん。大丈夫だよ」


「じゃあ勉強みてあげるよ」


ひー君はニコっとあたしに微笑むと、次に紅を見る。




「紅も今日はあいてるだろ?」


「は…?」


出口に向かっていた紅は足を止めた。



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