欲望チェリ-止まらない心
「うん…」



あたしは小さく、それだけ返事するので精一杯だった。


胸がいっぱいで……。



こんなに暑いのは、絶対に夏のせいだけじゃない。


ひー君に握られた手に汗がにじむ。


こんなに頼って…本当にいいのかな?


あたたかい愛情の中で、甘えて溺れてしまいそうな感覚になる。


自立したいのに、しなきゃと思うのに…


自分の足だけじゃ、泳げなくなりそうだ。











「あ…そう言えば紅は?」


しばらく歩いた頃


あたしは思い出したようにひー君を見た。


確か……紅も一緒に勉強するんだったよね?



「え?紅?」


ひー君が少し驚いた表情をする。


「うん。あれ?一緒に勉強するんだったよね?」


あたしの言葉にひー君はあぁ、と言う。


「紅は先に行ってるってさ」


「そうなんだ?今日はどこで勉強するの?」


「ん、ファミレスだけど…いいかな?」


「うん、もちろんだよ!」


あたしの笑顔にひー君もふっと微笑む。



そして、ひー君はあたしの手をギュッと握り直した。





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