欲望チェリ-止まらない心
「橘が毎回フルネームで呼んでくるから、俺が名前で呼べって言ったんだよ」
紅が腕を組みながら言う。
「へぇ?紅から?」
「あぁ。だっていちいち鬱陶しいだろ?」
紅がさも当たり前みたいに言うので、あたしは何故かちょっとホッとした。
「そっか。でも紅と三咲の気が合うなんて、意外だったな」
「だから……別に仲良くなんてないっつーの」
「だけど一緒に買い物にも行ったんだろ?」
「…は?」
「あ、偶然だよ?たまたま見たんだ」
ひー君の言葉にあたしの鼓動はまたドクドクと速くなる。
こんなにハラハラするのは、
知らず知らずの内に、あたしに何か後ろめたさがあるから?
ひー君はずっと笑顔なのに…
直視できない…
紅は黙ったまま、少し気だるそうに足を組み換えていた。
「やっぱり毎日一緒にいると、仲良くなれるものかな?」
ひー君があたしを見た。
「あ…う、ん!…まぁそうかも」
否定するのもおかしいよね?
あたしはぎこちなく頷いた。
「そっか。」