欲望チェリ-止まらない心




「橘が毎回フルネームで呼んでくるから、俺が名前で呼べって言ったんだよ」



紅が腕を組みながら言う。


「へぇ?紅から?」


「あぁ。だっていちいち鬱陶しいだろ?」



紅がさも当たり前みたいに言うので、あたしは何故かちょっとホッとした。



「そっか。でも紅と三咲の気が合うなんて、意外だったな」


「だから……別に仲良くなんてないっつーの」


「だけど一緒に買い物にも行ったんだろ?」


「…は?」


「あ、偶然だよ?たまたま見たんだ」



ひー君の言葉にあたしの鼓動はまたドクドクと速くなる。


こんなにハラハラするのは、


知らず知らずの内に、あたしに何か後ろめたさがあるから?







ひー君はずっと笑顔なのに…


直視できない…






紅は黙ったまま、少し気だるそうに足を組み換えていた。


「やっぱり毎日一緒にいると、仲良くなれるものかな?」


ひー君があたしを見た。


「あ…う、ん!…まぁそうかも」


否定するのもおかしいよね?


あたしはぎこちなく頷いた。



「そっか。」





< 258 / 488 >

この作品をシェア

pagetop