欲望チェリ-止まらない心
夕暮れの帰り道―――…
あれから、一言も話さなかったひー君は
あたしの家の前まで来て、ようやくあたしの手を離してくれた。
「三咲…今日はゴメン」
夕空は薄く霞がかった青で、
西の空にはオレンジの雲が広がっている。
「俺、カッコ悪いとこ見せちゃったね」
「…………」
ひー君の言葉に、あたしは首を左右に振る。
カッコ悪くなんて…
だけどあたしは目の前のひー君よりも、紅の最後の表情が忘れられずにいた。
「…紅のこと、だけど」
「!」
そんなあたしの心が読めたんだろうか。
まるで、全てを見透かすようなひー君の言葉にあたしはドキッとした。