欲望チェリ-止まらない心
そんなあたしに


「はぁー…マジで気分わりぃ」


彼は露骨に顔をしかめると、自転車のペダルに足をかけた。


カチャ、とチェーンがかかる音がして自転車があたしの隣を横切る。


しかし、追い抜きざま


「あ…」


彼は思い出したように、こちらを振り返った。


振り返りざま、赤い髪が冷たい目にかかる。


「あの人、親父の知り合いなんだよね。二度とカモにすんのやめてくれない?」


「……え?カモ?」


「今日のことは俺も黙っといてやるから」


「…………」


彼はそう言うと、また汚いものを見るような視線を向けた。



なんだろう…


この人はなんで、たかだかバイトでここまであたしに酷く言うんだろう。


あまりの言われように


日頃あまり騒がないあたしの腹の虫がムカムカと暴れだした。


あたしはスカートの裾を握りしめる。


そして、気が付くとあたしは声を出していた。


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