欲望チェリ-止まらない心
家の前まで来ると、門の前に誰かが立っていた。



「三咲」



「わっ、え?ひー君…!」



あたしは慌ててその影に向かって走り寄る。


「お帰り、三咲」


部活の防具を背負ったひー君はあたしを見て優しく笑った。


「ひー君っ…いつからここに?」


「さっき部活が終わったところだから大して待ってないよ」


防具を背負うひー君の髪はまだ少し濡れている。


乾いてないってことは、本当にさっき終わったとこなんだろうけど…


「ゴメンね。連絡くれたら良かったのに…」


ただでさえ部活後に疲れてるはずなのに。


「良いんだよ。友達と会ってたんだろ?邪魔したくなくて」


ひー君はそう言うと、あたしの髪を優しく撫でた。


ひー君の優しさにあたしの胸がきゅ…と締め付けられる。


まただ…


嬉しいのに、どこか申し訳なくて。


この複雑な気持ちはなんなんだろう…







「そういや三咲、週末に花火大会があるらしいよ」


ひー君がくしゃっと笑う。


「あ、うん!知ってるよ」


今日、優子ちゃん達も言っていたっけ。



< 276 / 488 >

この作品をシェア

pagetop