欲望チェリ-止まらない心
「じゃあお母さんっ…行ってくるから」


ひー君を直視出来ないあたしはお母さんにそう言うと、ズンズン前に進んだ。


「あ、三咲…!おばさん、行ってきます」


ひー君はお母さんに頭を下げると、急いであたしの跡についてきた。










「三咲、どうしたの?」


ひー君はあたしの横に並ぶと、あたしの顔を覗き込んだ。


「な…なんでもないよ」


あたしはプルプルと首を振る。


だって…


せっかくひー君も浴衣を着てくれたのに


それと比べて惨めになってるなんて言えなくて。


だけどひー君は、そんなつまらない事でいじけてしまうあたしにも優しいんだ。


「三咲、すごく可愛いよ」


「………」


「三咲が浴衣着てくれて、俺…すごく嬉しいよ」


「………」


あたしがひー君をチラッと見ると、ひー君は優しくあたしを見つめていた。


「久しぶりにゆっくりデートできるね」


「う…ん」


「今日は、三咲のこと離さないから」


「…………」


ひー君の笑顔にあたしの耳が熱くなる。


ひー君…それはどういう意味?


期待と好奇心に胸が高鳴る。


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