欲望チェリ-止まらない心
日が暮れ始めると、人混みはさらに増していく。


「ひ…ひー君…」


あたしはひー君からはぐれないよう、必死にひー君の手を掴み歩いていた。


「三咲、ちょっと休もう」


ひー君は人混みを掻き分けるよう、道脇にそれた。


河川敷の奥は木々が立ち並び、道脇の岩にあたし達は腰をかける。


熱気で浴衣は熱をもち、握りしめた手は汗でぐっしょり湿っていた。


「三咲、大丈夫か?」


「う…ん…」


「顔色が悪いよ?」



ひー君はそう言いながら、汗で濡れたあたしの額を拭ってくれた。


なんか…

気持ち悪いかも…


あたしはぐったりしながら、浴衣の袖で口元を押さえた。


背中をつたうものが、汗なのか冷や汗なのか分からない。


きっと、食べ過ぎだ。


食べ過ぎた上に人混みに酔ったんだ。


「三咲、気持ち悪いのか?」


「ごめ…なさい…」


「謝らないで?俺、水を買って来るから待ってれる?」


あたしは口元を押さえながら、小さく頷く。


「すぐ戻ってくるけど…変な奴に声かけられたら絶対に俺に電話して」


ひー君はあたしの片方の手に携帯を握らせると


スッと立ち上がり人混みに消えて行った。



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