欲望チェリ-止まらない心
どこかから吹奏楽部の小さな音が聞こえてる。



あたしは生徒会室に続く廊下を一人歩いていた。


学校に来るときは―…


いつも必ず一度は生徒会室に来てしまう。





あたしと紅を繋ぐ唯一の場所…


思い出に会える場所――…



紅に逢いたい


だけど逢えない


逢うすべがない……




だからこうして、
ここに来てしまうんだ。


ひー君に罪悪感を感じながらも衝動が抑えられない。


矛盾したあたし。










――ガララ


生徒会室の扉を開くと当然のように誰もいない。



――シャッ


閉じられたブラインドを開けると暗かった部屋に光が射し込んだ。



「…………」


いつものように…



あたしはそっと
紅の指定席に腰を落とす。


毎日紅が座っていた場所。



あたしの秘め事。



それだけで間接キスをしているような…


たったこれだけの事に


胸がどうしようもなく
熱くキュウ…と締め付けられる。


紅…


あたしはどうしたら良いのかな。



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