欲望チェリ-止まらない心
「デネブはね、他の星とは比べものにならないくらい超巨星なんだ」
「え?超巨星…?」
ひー君は頷く。
「星のサイズもそうだけど…。
例えばデネブが1日に放出するエネルギー量は、太陽が140年かけて放出するそれと等しいんだ」
「!」
「ちょっと難しいかな?」
「………」
ひー君の言葉にあたしは首を左右に振る。
「難しいけど…分かりやすいよ」
ひー君のこういう話はいつも、難しいけど分かりやすい。
あたしはひー君のそういう聡明な所にもずっと憧れていたんだよ。
「恒星進化論に従えば…デネブは数千年後には爆発してしまうんだ」
「爆発…しちゃうの?」
「あぁ。超巨星の宿命さ」
「…………」
「そしてデネブはブラックホールになってしまうんだよ」
「…………」
「なんて、つまらない話だったかな?」
ひー君は小さく笑うと夜空を見上げた。
「そろそろ、流星群が見えるはずなんだけどな」