欲望チェリ-止まらない心
駆け寄るひー君にあたしも笑顔をかえす。


「凄いね、決勝なんて!さすがひー君!」


「ありがとう、三咲」


ひー君は爽やかに笑う。






その時―――…


「!!」


ドク…ン


あたしは相手チームの輪の中に赤い髪を見つけてしまった。


う、うそ…








そんなあたしの驚く表情を見てひー君が困ったように笑う。


「うん。相手は紅なんだ」


「!」


「親友が相手なんて皮肉だね」


ひー君はニコっと笑った。


「じゃあ頑張ってくる」


ひー君はそう言うと、くるりと背を向けて駆け出した。


しかしひー君は戻る途中紅の所に行くとその肩を軽く叩いた。


そして親指でクイッとこちらを指していた。



ドキッ…


や、やだ、ひー君!


わざわざ言わなくても…



こちらを振り返る紅にあたしの心拍数が一気に高鳴る。


紅はあたしを見ると一瞬だけ目を見開いた。






ピ――――――!!





その時、集合の笛が鳴らされた。


同時に体育館内のざわめきが小さくなり


選手は自分のポジションについた。


コートの真ん中にはバスケットボールを持った監督。


いよいよ試合が始まる―――…



あたしは緊張に、ゴクッと唾を飲み込んだ。






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