欲望チェリ-止まらない心
だけど






「そっか…矢嶌先輩は大丈夫そうだった?」





「ッ………」


何も知らない二人の言葉が心の傷をえぐる。


笑顔がひきつる。





「う…ん。ケガは大丈夫みたいだよ?」




…ダメだ。


紅の名前を聞くだけで…胸が引き裂かれそうな思いがする。


そんなあたしを見て二人は何かを察したようで


それ以上は何も聞かないでいてくれた。









―――昼休み



それは予期なく訪れた。


現実はどこまでも、容赦なくあたしを襲う。





【文化祭実行委員と生徒会役員にお知らせです】


ランチタイムの教室に流れる、校内放送。


【本日、議会を行います。役員は全員、放課後、別館1Aの教室に…】





あたしのお箸をもつ手が止まり体から血の気が引いていくのが分かった。



うそ…


こんなタイミングで、議会が召集されるなんて。


絶望的な展開に指が小さく震えだす。


昨日の今日で――…


紅とひー君に会えっていうの?


心の整理も、なんの覚悟もまだ出来ていないよ…。


無理…

行きたくない……


怖い……


そんな思いがあたしを支配する。






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