欲望チェリ-止まらない心
上映時間が近付き客席も満席になった頃


ひー君があたし達に気付いた。


「三咲、来てくれてたんだ」


ひー君が爽やかな笑顔でこちらに駆け寄ってきた。


「うん。本当に本格的だね。さすがひー君」


あたしの笑顔にひー君も小さく微笑む。


「この上映が終わったらしばらく昼休憩になるから。ちょっと一緒に回ろうか」


「うん」


ひー君はあたしの頭を一度だけ撫でると、また機材の方へ戻っていった。



その背中を見つめながら…


あたしは改めて感じた。


紅を心に残したまま、こんな風にひー君にも笑うなんて


あたし最低だ。


ひー君に失礼すぎる――…



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