欲望チェリ-止まらない心
「……………」


紅は手元のストップウォッチを一度チェックしてから


余裕があると判断したのか足早にあたしの方へやって来た。



ドクン ドク…ン



紅が――…


紅がこっちに来てくれる。



緊張と恐怖と嬉しさが…ぐちゃまぜになる。








あたしの目の前にたった紅は、薄暗い中であたしを見下ろした。



「どうした?」


「………っ」


「なんか用か?」




響き渡る音楽の中で、紅の声だけが強調されてあたしに届く。



「あ……の…」


久しぶりの紅との会話。


紅がいる…

たったそれだけで。



極度の緊張と混乱で


あたしは伝えたかったことが頭の中から一気に飛んでしまった。







何も言えずただ紅を見るあたし。


手足が小刻みに震えてく。









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