欲望チェリ-止まらない心
そんなあたしに


紅はストップウォッチに視線を落としてから、小さくため息をついた。



「用がないならもう行けよ」


「……っ!」


「俺、仕事があるから」


そう言って紅はくるりと背を向けた。





だけど



やだ…!

あたしは思わずその背中のシャツを掴んでいた。


「あの…!記事が!」


「――は?」


「えっと…記事が優秀で!あの…紅の記事が!」


「……………」



むちゃくちゃな日本語に、振り返る紅は眉をひそめる。


あたしの顔は赤くなった。



「それで…お礼…あの…」


完全にパニックだった。


何を言ってるのか自分でも分かんなくて…


ほら、

紅も意味が分かんないって顔であたしをみてる。




「やだ…ちが…もう…あたしの日本語おかしい」




恥ずかしくて

胸がいっぱいで




「ごめ…んなさい…あたしただ…お礼を」




ただ紅との久しぶりの会話が嬉しくて




「っ… 」


泣いたらダメなのに


こんなつもりじゃなかったのに


あたしは気付くと感極まって泣いていた。







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