欲望チェリ-止まらない心
――――その時







「そこで何してるの?」






薄暗い舞台の奥から、冷たい声がした。




―――え?




あたしが振り返ると、そこにはひー君がいた。



紅はスッとあたしから手を離す。


「別に何もしてねーよ」


冷静な紅に対して、あたしは声が出ない状態だ。





なんで??

どうしてひー君が??





ううん、

そんなことより…

あたしまた、ひー君を…






薄暗い舞台裏で、ひー君がゆっくり近付いてくる。



一歩、また一歩。



舞台袖からバンドの照明が漏れて、近付いてくるひー君の表情が見えた。





ドク…ン



そこにいつもの穏やかなひー君はいない。



ひー君の瞳はゾッとする程冷たかった。




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