欲望チェリ-止まらない心
ひー君は部屋のTVにDVDをセットしている。


あたしはその背中を見つめながら、ベッドを背もたれにクッションを抱えた。


「最初はひー君セレクトからがいいな」


「了解」


ひー君はセットするとあたしの隣に座った。


人、一人分離れた距離に座るひー君に、なんだか逆に意識してしまう。



そして、映画が始まった。












――――――…
――…




「いい映画だったね」


ひー君セレクトの映画は穏やかで優しい内容だった。


X'masに起こる奇跡のヒューマンドラマ。


最後にホロリと涙がでそうになって、心が暖かくなれた。


「そうだね」


あたしの隣で微笑んだひー君は映画を停止させると一度う―んと伸びをした。


「ねぇ三咲。やっぱりちょっと散歩でも行かない?」


「え?」


「なんか最近肩が凝っててさ」


ひー君は苦笑いする。


あぁ、そっか…

ひー君、受験生だもんね。



「いいよ!じゃあ公園に行く?」


「うん。そうしよっか」


そして、あたし達はひー君の部屋を後にした。



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