欲望チェリ-止まらない心
だけど…





「あ…れぇ?優花先輩じゃないですか!」


あたしは精一杯の平然を装って


まるで、さも今二人に気付いたかのような明るい表情を作った。



もう戻れない。

自分で決めたことだから。


あたしはここで、泣くわけにはいかない。



あたしの笑顔に優花先輩もニコッと笑った。


「わぁ、久しぶりだね~!あの打上げの時以来だっけ?」


「はい、そうですね」


「あはは、あの時は酔っちゃってごめんね~」


「いえ…あたしは何も出来なかったんで…」


「藤ヶ崎くんも受験生なのに、デートなんて余裕じゃない?」


「はは、二人だって受験生だろ?」




初めて見る私服の優花先輩。


白いダウンの下に鮮やかな赤のタートルネック。


優花先輩は、いつもよりずっと綺麗で大人っぽくて。





紅の為に、オシャレしたの?

そういうのが…紅の好みなの?






駄目だとわかっていても考えてしまう。

ドロドロの黒い渦が止められない。




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