欲望チェリ-止まらない心
それ以来、あたしは何度も校内で紅を見かけた。


優花先輩の台詞のせいか、余計に紅に敏感になってるあたし。






だけど、結局…声をかけることはしなかった。





そこから進む勇気が出ない。


進むということは、ひー君を捨てるということ。


そんなこと…やっぱり出来ない。


今さらこんなことを考えてしまうことすら、もう嫌だった。



だって決めたのに。


自分で納得したはずなのに。







“本当は納得できてないんじゃないの?”





優花先輩の言葉はあたしの心を丸裸にした。


どんなに誤魔化しても、自分に言い聞かせても…


わかってる。


やっぱりあたしは


紅ともう一度話したい…

紅に…逢いたい。











でも……


ひー君を裏切れない。

傷付けられない。








結局そこに逆戻りして。



夜、枕に顔を埋めて何度も泣いた。


この半年間、あたしはなにを頑張ってたんだろう。


みんなを傷付けたくなくて決めたはずなのに…


どこにも出口のない迷路の中で、みんなの傷は深まっていく一方だ。





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