欲望チェリ-止まらない心
紅―…



もう…恋人になれなくてもいい。


友だちのままでいい。



だけど…

せめてつながっていたい。





大丈夫って…言ってくれたじゃん。


あたしといると楽しいって言ってくれたじゃん。


これで終わりなんて、寂しいよ。


紅――…










「…――さき。三咲?」


「……え?」


「今の話、聞いてた?」


ハッとするあたし。


やだ…!
あたしったら、また…!




よりによって、こんな日にまで――…






「ごめ…ん!ぼーっとしちゃって……ひー君が卒業したから、あたし…」


つい咄嗟に出た、あたしの嘘。


「ははは。卒業しても会えるから大丈夫だよ」


ひー君は優しくあたしに微笑んだ。


「う……ん…」


その笑顔にズキンとなる。


だってひー君の顔…

少しだけ寂しそう。




ごめんね…ひー君。

こんな彼女でごめんね。

もう紅の事は忘れるから。


だから…今日だけは許して…。








揺れる感情はまるで波のように


紅への想い…

ひー君への想い…


それぞれが心に押し寄せては引いていく。







どっちも大切…、は許されないんだ。


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