欲望チェリ-止まらない心
同乗口につくとまだ紅の姿はなかった。


行き交う人々の中でキョロキョロするあたし。



どこ…?

どこにいるの?



緊張はピークに達していた。


張りつめた緊張の糸はキリキリと…

今にも切れる寸前だ。




どうしよう…

泣きそう…












その時―――…





「三咲」



――――え?




人混みの中、声の方をみるとひー君がいた。


「ひ、ひー君……!」


ひとりぼっちの見知らぬ場所で…


不安、迷いの中で張りつめていた心が、ひー君の姿を見て一気にゆるんでいく。



「…ひー君も見送り?」


あたしはひー君の元へと駆け寄った。


「あたし…なんだか不安で……ひー君がいてホッとしちゃった」


へへ、と笑うあたしに…

ひー君も優しく微笑んでくれた。





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