欲望チェリ-止まらない心
「紅、まだいないんだよ」


「うん」


「あ…あたし一人で空港に来たのなんて初めてで」


「うん」


「緊張で…あ、足とかガクガクして…えへへ…」


「……うん」



ひー君は…

無理やり笑うあたしを、ただ優しく見つめてくれる。


あたしの視界は滲んでいく…


「……あ、あれ…?なんか…ひー君みてホッとしたのかな?」


あたしは慌てて涙を拭いた。


「ごめ…すぐ…泣き止むから」


「……うん」


「ごめ…ひー君…ごめんなさ…い」


「三咲…」


「ごめ……」


拭いても拭いても溢れる涙。





もう…心がぐちゃぐちゃで。


ひー君を見てホッとして…。


そんな気持ちも申し訳なくて。


ここまでしてもらって、未だに迷ってる…そんな自分が大嫌い。





< 459 / 488 >

この作品をシェア

pagetop