欲望チェリ-止まらない心
ひー君の言葉に、時間が止まったかと思った。
言葉が出ないあたしに、ひー君はゆっくり続ける。
「俺さ、秘密にしていた夢があるんだ」
「………」
「親にも言えなかったけど…。本当は俺、ずっと宇宙飛行士になりたかった」
「………」
「行きたい大学に…憧れの教授がいるんだ」
ひー君は小さく微笑んだ。
「三咲と夢を天秤にかけたり…バカなことで一人悩んだ時期もあってさ」
「…………」
「だから良い機会だったんだ。踏ん切りがついた」
それは…
あたしを悪者にしない為のひー君の優しさ。
ひー君は優しく微笑むとあたしの視界をその手でゆっくりふさいだ。
「俺からの贈り物…」
ひー君は目隠ししたままあたしの体を後ろに向かせた。
「こうしてあげるのが…遅くなってごめんね」
そのまま…ゆっくりと離れるひー君の手のひら。
そして
あたしの視界の先には紅がいた――…