欲望チェリ-止まらない心
紅はカツカツとこちらに近付いてきた。



「海外に行くって、ほんとなのかよ…?」


紅は手のひらをギュッと握りしめている。


「それって…俺のせいかよ」


そんな紅に、ひー君はクスっと微笑んだ。


「まさか。俺はそこまでバカじゃないよ。自分の夢の為に行くんだ」


「…………」


「俺がいなくなったら、三咲はきっと混乱するから…後のことは紅に頼んだよ」


「な……」


「じゃあ、そろそろ時間だから…」



ひー君は話しを無理やり中断させると、最後にあたしの髪にそっと触れた。


ひー君の…いつもの仕草。


だけどその触れ方は今までで一番優しくて…。


あたしを見つめるひー君の瞳から、もうこれが本当に最後なんだって伝わってきた。








「三咲、必ず幸せになるんだよ」


「………」


「俺はいつでも…三咲の一番の味方だから」





あたしは……


声を失ったみたいに、ただ突っ立って涙を流していた。



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