欲望チェリ-止まらない心
ひー君はそんなあたしに小さく微笑むと、スッとあたしから離れて搭乗口に向かって行った。






ドク…ン



今まで…傍にいて当たり前だったひー君が、初めてあたしから離れていった。



「……ぁ…」


思わずその背中を掴みそうになる手。


ひー君……






だけど


出かけた言葉を飲み込んでしまった。


だって……


今まであたしがひー君にしてきたことを思うと、呼び止められる訳がない。









ひー君は…もう最後まで振り向いてくれることはなかった。






ゲートの向こうに消えていく背中。


ずっと追いかけてきた…

憧れていた、大好きな背中。



あの背中に追いつきたくて…

ただ走っていた遠い日々を思い出す。






あたしは……


その場に立ち止まったまま、その後ろ姿を見つめることしか出来なかった。




< 464 / 488 >

この作品をシェア

pagetop