欲望チェリ-止まらない心
残された想い
三咲が去った空港。
紅はそのまま、窓側に並ぶイスに座り込んだ。
本当に…いつも損な役回りの自分に笑えてくる。
だけど自分のやるべき事はこれで良かった。
後悔なんてしていない…。
紅は疲れ果てた体を休めるように、前屈みに頭を抱え込んだ。
その時
「やっほ~、紅!」
「…………」
「え?なに?!泣いてるの?」
「………泣いてないし」
紅は顔を上げると隣に座ってきた優花を睨んだ。
「せっかくあたしが紅が上手くいくように根回ししてあげたのにさ」
「…余計なお世話だったっつーの」
「せめて自分の気持ちぐらい言っちゃえば良かったのに」
「ふん…俺は最後まで隠し通す自信があんだよ」
「まったまたぁ」
優花は笑いながら紅の背中に手を置いた。
「今日はX'masのお礼にあたしがとことん付き合ってあげるね」
「いらねーよ」
「え~でも紅の誕生日も祝わなきゃ」
「…んなの忘れてたし」
紅は優花から逃げるようにイスから腰を上げた。