欲望チェリ-止まらない心
「Hey、聖」
大学の図書館で調べものをしていた俺は、その声に顔を上げた。
学生寮で部屋をシェアしているオーストラリア人の男だ。
「今夜、寮ノ仲間デ、パーティーヲヤルンダケド、聖モ来ルダロ?」
「うん、参加するよ」
「OK♪」
ルームメイトは俺の返事を確認すると戻って行った。
留学して3週間。
大学はSpringBreak、いわゆる春休み期間だった。
俺は入学前のレポートに一区切り打つと図書館を後にした。
時間は昼下がり。
都市郊外に位置するこの場所は緑豊かで穏やかなところだった。
部屋の片付けももう済んでしまったし…今日は何をしよう。
日本から持ってきた本もすべて読んでしまった。
新しい本でも買いに行こうかな。
今はまだ…何もしない時間があるのが嫌だった。
何もしないでいると、深く考えてしまうから。
思い出してしまうから。