欲望チェリ-止まらない心
学生寮に戻る道の先で、三咲に似た後ろ姿を見つけた。


「っ……」


俺は目を反らすと、咄嗟に何か違うことを考えていた。


そんな自分に気付いて、無性に虚しくなる。


一体……俺はいつまでこうやって、記憶から逃げ続けるんだろうな…


いつになれば、楽になれるんだろう…








その時だった。




「ひー君!!」



―――…え?



俺が顔を上げると、三咲に似ていると思った少女がこちらへ走ってきた。




「ひー君…!逢えて良かった!あたし迷子になってて…」


その手には、くしゃくしゃの地図が握りしめられている。


「寮に行ったら出てるって言われて…でもあたしすぐに逢いたくて…探そうと思って…」


赤いニットのダッフルコートにマフラーと耳当てをして…


寒さに紅く頬を染めた三咲は、俺を見てその瞳を潤ませた。



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