鉛の筆
そして、どちらからともなくつけたテレビをぼんやりと眺めながら、やはり早苗は、視界のどこかで勲の携帯電話を捉えている。
勲がシャワーを浴びている時に…いつも早苗は、そう思う。それなのに、この二年間、一度もその電話に触れたことすらないのは、何故なのだろう。
勲が、シャワーを済ませ、シャンプーの匂いを漂わせながらソファに座る。
早苗は、その勲の肩に寄りかかって目を閉じる。
この時間が、ずっと続けばいいのになどと、子供染みた言葉は吐かないのが早苗の誇りであり、また支えでもあった。
勲の妻の髪が短いと知ったのは、いつもの情事の別れ際だった。
早苗は、勲と会う時は、勲の自宅のすぐ裏にあるコインランドリーの駐車場に車を停めていた。いつ潰れてもおかしくはないような寂れたコインランドリーだ。無断駐車を咎められる心配はない。
勲の考えている事がわからなくなったのは、これが原因である。どうして早苗の車を自宅のすぐ裏に残して、平気で出掛けられるのか。
そしてラブホテルから戻れば、必ず自宅を横目に見ながら、早苗に別れのキスができるのか。
勲がシャワーを浴びている時に…いつも早苗は、そう思う。それなのに、この二年間、一度もその電話に触れたことすらないのは、何故なのだろう。
勲が、シャワーを済ませ、シャンプーの匂いを漂わせながらソファに座る。
早苗は、その勲の肩に寄りかかって目を閉じる。
この時間が、ずっと続けばいいのになどと、子供染みた言葉は吐かないのが早苗の誇りであり、また支えでもあった。
勲の妻の髪が短いと知ったのは、いつもの情事の別れ際だった。
早苗は、勲と会う時は、勲の自宅のすぐ裏にあるコインランドリーの駐車場に車を停めていた。いつ潰れてもおかしくはないような寂れたコインランドリーだ。無断駐車を咎められる心配はない。
勲の考えている事がわからなくなったのは、これが原因である。どうして早苗の車を自宅のすぐ裏に残して、平気で出掛けられるのか。
そしてラブホテルから戻れば、必ず自宅を横目に見ながら、早苗に別れのキスができるのか。