あの頃の想い
私は、先生の顔を見ることができずにうつむいてしまった。
きっと先生を困らしている。

「俺は…俺の気持ちは…矢野さんには伝えてはいけない。あってはならない気持ちだ。だから…」

涙が頬を伝う。
どうしても正直には教えてくれないんだね。
私は椅子から立ち上がり先生を見つめた。

「やっぱり、大人はずるいね。本心を知りたいって純粋に思っただけなのに先生は『先生』だから教えてくれないんだね。ごめんね、先生。困らしちゃって…もうそんなことしないから………バイバイ。」

私は走って準備室を出た。

「矢野さん!」

先生の私を呼ぶ声がむなしく準備室に響いた。
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