向日葵の手紙


***





カナカナカナ…


何の虫の鳴き声だか知らないけど、蝉じゃないことだけは確かだと思う。

一生懸命鳴いている。


小さな命を燃やして。




ガチャっ


部屋のドアが開いた。



「勉強頑張ってる?ハイ、これ差し入れ」



水羊羹と麦茶をお盆に乗せて持っている、お母さんが立っていた。






…何であたし、今期待したんだろう。





あたしはまだ優を忘れてないのに。



何で日向に会いたいのだろうか。



「――ありがとう、お母さん」




…パタン



部屋のドアが閉まった。







…あたしは、日向が好きなのだろうか。




仮にそうだとしても、それでいいのか。


また人を好きだと自覚していいのか。




……あたしはまだ、人を大切にできるのだろうか。
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