向日葵の手紙
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カナカナカナ…
何の虫の鳴き声だか知らないけど、蝉じゃないことだけは確かだと思う。
一生懸命鳴いている。
小さな命を燃やして。
ガチャっ
部屋のドアが開いた。
「勉強頑張ってる?ハイ、これ差し入れ」
水羊羹と麦茶をお盆に乗せて持っている、お母さんが立っていた。
…何であたし、今期待したんだろう。
あたしはまだ優を忘れてないのに。
何で日向に会いたいのだろうか。
「――ありがとう、お母さん」
…パタン
部屋のドアが閉まった。
…あたしは、日向が好きなのだろうか。
仮にそうだとしても、それでいいのか。
また人を好きだと自覚していいのか。
……あたしはまだ、人を大切にできるのだろうか。