I LOVE YOUが聴きたくて
夕焼け空の中、綾と修は、並んで一緒に歩いていた。

卒業式の帰り道。

高校から続く、大通り。

「そういえば、笠原くんは、卒業した後、どうするの?」

「俺は、医大に進むよ」

「そうなんだ!おめでとう!」

「ありがとう」

「凄いなぁ!そっか、笠原くんは、頭もいいものねぇ」

綾は、目を丸くして、尊敬の眼差しだった。
「頭も?」

「うん」

「も、ってことは、他は何?」

修は、ニタニタ笑って、わざとに尋ねている様子。

それがわかって、綾も、わざとに言う。

「さぁ~なんだっけ」

「意地悪だなぁ」

修は、まいったなぁという様な、苦笑いしながら、笑っていた。

綾も、笑う。

「どうして、医大に進もうと思ったの?小さい頃からの夢とか?」

「親父が医者なんだ。小さい頃から、親父の病院を継いでくれって言われてる」

「そうなんだ。知らなかった」

「だよね。結婚したら、院長婦人だよ」

「ん?」

「ん?って。綾がだよ」

「えぇ…」

綾は、ちょっとびっくりして、目をパチバチさせて微笑んだ。

修が、結婚とか言うし、綾、と呼んだので、綾は、戸惑っていた。

【男子に、初めて呼び捨てにされたなぁ。こんな気持ちになるんだぁ。悪くないな。笠原くんと、結婚…なぁんて…】

修は、何食わぬ顔で笑っている。

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