I LOVE YOUが聴きたくて
~ カラン カラン ~
扉に付けたベルが鳴り、お店のドアが開いたことに気付く。
「いらっしゃいませ」
魅麗は、開店の第一声を気持ち良く言った。

「こんにちわ」


茶色のトレンチコートを着たシックな秋の装いの女性が、魅麗に丁寧に挨拶をしながら、お店に入ってきた。

「こんにちわ。いらっしゃいませ」

魅麗も挨拶をする。
初めてのお客様は、二十歳くらいの、笑顔の若々しい、上品な風格をかもしだした女性だった。

「開店、おめでとうございます」

彼女は、そう言うと、魅麗に花束をプレゼントした。

「まぁ!」

お客様とはいえ、見ず知らずの人からの突然のことに、魅麗は、大変驚いた。
その様子を察し、彼女は言う。
「このお店が建設中の時、たまたま前を通ったことがあって、『何のお店ができるのかな~』って思ってたんです。二回目通った時、可愛いきのこの建物が出来上がっていて、まるで、おとぎ話からそのまま飛び出してきたみたいで感激してしまって、オープンを楽しみしてました!」
彼女は、若さいっぱいの満面の笑顔で魅麗に言った。
「そうですか!有難うございます!」
魅麗は、そんなふうに期待して来てくれた人がいたことに、胸がいっぱいになりながら、感謝の気持ちでいっぱいになった。
「どうぞ、ゆっくりしていって下さいね。テーブルと椅子を置いてますので、御自由に寛いで下さいね」
魅麗は、やっと出会えた、念願の叶った現実の第一歩に、込みあげるものを感じながら、微笑みながら、彼女に言った。
「はい」
彼女は、笑顔で頷くと、コートを脱ぎ、バッグとコートを、そっと、きのこの椅子に置き、店内を歩きだした。

「わぁ、可愛い!」

彼女は、雑貨が好きな様子で、ひとつひとつ手に取って眺めていた。
魅麗は、彼女から頂いた花束を、早速、花瓶にさす。お気に入りのクリスタルの花瓶にさすと、どの角度からも見えるように、きのこ模様のテーブルの真ん中に飾った。
陽当たりの良い中、花たちは、暖かい日の光に包まれて、鮮やかに咲いていた。
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