I LOVE YOUが聴きたくて
「摘んだら可哀想だよね?」
怜(ユウ)は、魅麗を見上げて尋ねる。
「う~ん、そうだねぇ。お花も生きてるからね。お花にとっては、花瓶の中よりも、こうして、土に根を張っている方がいいでしょうね。太陽の光を、いっぱい浴びれるし、雨にもね。時々、蝶々とお話したりして。自然の中で生きてるものだからね、自然の中が一番いいはずよ」
「うん」
怜(ユウ)は、お花を見ながら、力いっぱい頷いた。
「バイバイ。またね」
怜(ユウ)は、階段を上がりながら、お花たちに手を振った。



「ママ~、だっこ~」
怜(ユウ)が、階段を上がらなくなり、立ち止まって、魅麗にせがむ。
「ダメ!あと少しだよ!頑張る!」
魅麗の言葉に、怜(ユウ)は、ダダをこねる。
「ユウ、あと何段だ?」
「………」
「ん?何段?階段の数だよ。数えて。ほら、自分で数えて」
「…、いち、にー、…さん、しー、ごっ、ろく……、ろく」
「ん?何段?」
「ろく…、ろくだん」
「うん、そう!六段ね!」
「うん…」
「六段、上がれるね?あと六だけ。頑張れるね!ママ、最後までやらないのは嫌い。できる?できない?」
「よし!偉い子!」
怜(ユウ)は、魅麗の手を握って、一生懸命に、一歩一歩、階段を上がりきった。


「よくできましたー!」
階段を上がりきった我が子を、魅麗は抱き上げて、ぎゅっと抱きしめながら、めいいっぱい褒めた。

「ママ!人がいるよ!」
怜(ユウ)が、我が家のお店の方を指さして言う。
「ん?」
怜(ユウ)に言われて、魅麗は、お店の方を見た。
「まぁ!」
お店を囲む様に、広々作ったテラス席に、何人も、お客様が、座っていた。

【お見えになって、しかも、お待ちになって下さってたんだぁ】
魅麗の感激は、ひとしおだった。

魅麗は、怜(ユウ)を抱っこして、お店にかけ寄り、鍵を開けてドアを全開にする。

~ カラン カラン ~
扉につけたベルが揺れる。
すると、お客様が、それぞれに、お店の入口へと足を運んだ。
「見晴らしがいいね~ここ」
「そうねぇ、眺めがいい!景色が見渡せるねぇ」
お客様は、口々に言っている。
魅麗は、一礼をしながら、お客様を招いた。
「ようこそ、いらっしゃいませ!!」

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