I LOVE YOUが聴きたくて
「魅麗さん、また来るね。マッシュルームのスープ、とっても美味しかった!ごちそうさまでした」
綾は、お辞儀をする。
友人たちも、それぞれにお礼を言っている。
泉は、
「私、ひとりで来ちゃうかもしれません」
と、にこにこしながらいっていた。

「ぜひ、いらして」
魅麗は、目を細めながら、とても優しい笑顔だった。

「じゃあ、また」
「気を付けてね」
「うん。あ、ユウくん、起きたら、また遊ぼうねって」
「起きなかったものね。うん、言っておく。ありがとう」


綾たちは、階段を降りながら、振り向き、見えなくなるギリギリまで、魅麗に、手を振っていた。


夕日が、街の風景を染める。
夕焼け空が、真っ赤に染まっていた。





~ キーン コーン カーン コーン ~

秋の放課後。

生徒たちは、一斉に下駄箱を出ると、それぞれに、部活動に行ったり、下校したり。


「綾、バイバイ~」
「バイバイ~」

綾の名前に反応して、ひとりの男子が、綾に目を移す。
綾は、気付くことはなく、そんなことは全く知らず、声をかけてきた友達に手を降ると、ひとり、校庭の水道で、手を洗い始めた。

何気無く、綾を目で追っていた男子は、自分の部室の側の水道へやってきた綾を見て、彼は、自分たちの部活の練習を一度止めて、休憩を入れた。
そして、徐に、水道の方へ歩み寄ると、彼は、何も言葉はなく、綾に自分のタオルを差し出した。

綾は、ふと、気付く。と言うより、誰かがタオルを自分に差し出したので、びっくりした。

綾が、差し出した人の方を見ると、ひとりの男子がいた。

「笠原くん。??」

クラスメイトの笠原 修だった。
彼は、サッカー部のキャプテンで、とても女子にモテる、クールでかっこいい男の子。

でも、彼が何故???。
綾は、驚いていた。

彼とは、クラスメイトだが、特別仲が良いわけでもなく、クールな彼は、女子と必要以上に話すことはなく、当然、綾もそうだった。

ましてや、彼が、女子にタオル差し出すなど、考えられない事だった。

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