I LOVE YOUが聴きたくて
とても、静かだ。

波の音だけがしている。
とても、癒される。


怜樹は、特殊な夜光絵の具で、壁面に色をのせていた。
怜樹独特の、美しい、なんとも言えない色彩が、真っ白な巨大なキャンバスに、彩りを添える。

「ん?……」

怜樹は、なんとなく、何かが聴こえてきたような気がして、筆を止め、耳を傾けた。

波の音だけがしている。
「気のせいか……」

怜樹は、再び、筆を躍らせる。


「………」


やはり、波の音の他に、何かがかすかに聴こえてくるような気がして、怜樹は、耳を凝らした。


「…?…音楽…?かな」

怜樹は、周りを見渡した。
誰もいない。

姿は見えないが、聴こえてくる。


和風の音響。

笛や太鼓、三味線などの音が聴こえる。


「あぁ!」


懐かしいような、日本人なら誰もが知っている聞き覚えのある音に、怜樹は、心踊る。


どこから聴こえてきているのか、遠くからだろうか、近くだが音を小さくしているのだろうか、何だかわからないが、聴こえてくる。


御囃子が、どこからか、聴こえるのであった。


「何だか、いいなぁ。どこから聴こえるんだろう。練習をしているのかなぁ」


怜樹は、気になりながら探すけれども、見つけることの出来ないことに、探すのは諦めて、心地よいような、懐かしいような、御囃子に、ひとり、酔いしれていた。
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