I LOVE YOUが聴きたくて
「なるほど」

老人は、目を閉じて頷いていた。

「ほう、そういえば。絵描きさん、思い出のエッフェル塔と言っておったな」

「あ、はい」

「お洒落じゃのう」

老人は、怜樹を見てそう言うと、空を見上げて目を閉じた。

「そう、ですか」

怜樹は、照れ笑いを浮かべる。

「おなごじゃの?」

「え?」

「おなごはわからんか。女じゃよ」

「えぇ?……」

怜樹は、笑いながら戸惑いをみせた。

「違うかの?」

老人は、空を見上げていた顔を、すっとうつ向き加減で上目使いにし、開いてるのか開いてないのかわからない眼を、片瞼は瞑り、もう瞼片だけふっと開いて、しかと、怜樹を覗く。

「まいったなぁ~」

怜樹は、苦笑いしながらも、微笑んだ。

「なるほどなるほど。洒落ておる。ええのう」

老人は、目を細めて微笑みながら、噛みしめるように頷いていた。

怜樹は、そんな老人を見ながら、心地よいような、快いような、なんとも言えない、不思議な居心地の良さを感じていた。
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