I LOVE YOUが聴きたくて
そして、怜樹は、魅麗をそっと見つめた。

魅麗は、それに気付かずに笑っている。

そんな魅麗を見て、怜樹は安心した。

「良かった。元気そうで」

「え、あぁ…うん。怜も元気そうで、良かった」

「うん、元気だよ」

「あれから、本当に、いろんな国へ行ったんだね。いろんな国で、絵を描いて、描き続けて。テレビやなんかで、よく耳にしてたよ。大変なことも、沢山あったんだね。辛いことも悲しい別れも……。よく頑張ったね。やっぱり、怜は凄い」

「ありがとう…なんか、恥ずかしいな…」

「どうして?」

「いや…だって、人に褒めてもらいたいために、行ったんじゃないから…なんだか…」

怜樹は、どう言ったらいいのか戸惑う。

「なかなかできることじゃないよ。私、怜を尊敬してるの」

「ありがとう」

「いくつかの国には、怜の描いた絵が、記念として残っている場所があるんでしょ?」

「あぁうん、あるよ」

「私、いつか見に行きたいって思ってるの。まだ、いつ行けるかわからないけど」

魅麗は、目を輝かせた。

「あ、じゃあ。一緒に行こうよ」

「え?」

「僕も、いつ行けるかわからないけれど、年月が経って、また見たい気もするし」

「うん、そうだね」

なんとなく歯切れの良くない魅麗の様子に、怜樹は疑問に思う。

「あ、なんか悪かったかな。無理だったら、言ってくれて全然構わないよ」

「え、あ、ううん。そんなことない」

「?…」

少し、沈黙の時間(とき)が流れた。
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